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続・多賀山日記「笑うサメ」

by 清水哲男

離島を歩くようになってはじめて口にし、好物になったモノがいくつかある。

その筆頭がフカだ。そうサメだ。湯引きにして酢味噌で食べると、実にうまい。もちろん焼酎によくあう。

はじめて口にしたのはトカラ列島の中之島だった。島の駐在さんのお宅で、奥さんの手料理をいただいた時に最初に出てきた小鉢がそれだった。

「これでちょっと一杯やっててください。今、魚さばいてますから」と。

中には皮を残したままの白身魚に酢味噌をかけたものが。酢味噌とはいえ、からしがツンと効いていた。身は弾力があり、歯ごたえがあった。はじめての食感だった。

「この魚なんでしょう?」と首をひねるぼくに駐在さんが笑いながら言った。

「フカ、シロブカ、サメですよ」と。ぼくの頭の中で巨大なホオジロザメが凶暴な目を輝かせて泳ぎ回っていた。それを察したのか駐在さんは「小さい可愛いやつですよ」とふたたび笑った。以来ぼくは茹でたフカと焼酎の組み合わせの虜になった。

種子島の漁港を歩いていた。女性ばかりのグループが競りを眺めていた。

「新鮮よねえ」

「こういうモノばかり食べてたら安全、安心よねえ」

「都会で見るときは切り身になっちゃってるもんねえ。何食べてるんだか……」

カメラをぶら下げた若い女が声を上げた。

「わっ、気持ち悪い! 種子島の人はこんなの食べてるんだ」

側にいた漁師らしき若い男が苦笑いを浮かべながら言った。

「あなたも食べてるよ。カマボコとかで」

普段自分が口にしている加工食品が何でつくられているか知らずに、安全・安心を口走っていたのか……。

海の底でサメたちが歯を見せて嘲り笑っているような気がした。

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