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続・多賀山日記「さよならだけが人生だ」

by 清水哲男

少し前の話だ。息子を伴って久しぶりの店を数軒訪ねた。

「静」や「たこ入道」「たつみ」「スタンド」「サンボア」など、もう四十年以上通っている店ばかりだ。中には祖父さんに手を引かれて行って、五十年以上顔なじみの店もある。鹿児島に移って二十三年、その間年に数回しか顔を出さなくなってしまった。でも、たまに行くと、ああ、故郷京都に帰ってきたなと、ほっとすること頻りだ。

そこで息子相手に昔の話をする。自分がちょうど息子の年頃だった頃の話だ。どんなふうに酒を飲んでいたか、どんなふうに遊び回っていたか、どんな女の子と付き合っていたか、いかに適当に、いかにいい加減に生きていたか……。そんなことを自嘲しながら、楽しみながら話して聞かせる。そうして、ああ、年をとったなあと思う。

だが、自分の父親とは終ぞいっしょに飲み歩くなどということはなかった。

「お祖父ちゃんは心残りやったやろなあ。親父と呑むのはけっこうおもしろいで」

息子はそう言って笑った。

「確かにな……」

それはぼく自身の心残りなのだ。どうしてもっとこころを開くことができなかったのだろう。

「後悔してもしかたないな。花に嵐のたとえもあるさ」

そう言ってグラスを空けた。

「なに、それ?」息子が不思議そうに聞いた。

「さよならだけが人生だ!」

どこかで父が笑ったような気がした。

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