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続・多賀山日記「いのちの旅」

by 清水哲男

海岸までの三十メートルほどを、ウミガメと並んで歩いた。

彼女は、そう、彼女だ、深夜誰もいない真っ暗な浜に上がり、いのちを継ぐために卵を産み落としていた。そっと近づき、様子を見守る。彼女は人間の存在など気にする様子もなく、自らがすべきことに全精力を注ぐ。波の音の狭間に、大きな息づかいが聞こえる。

すべてを終えた彼女は、新しい命を砂の中に残し、ふたたび海を目指す。ウミガメは一回の産卵で五十個から百個のいのちを生み出す。生まれた新しいいのちは三十年という時間大海原を回遊し、生まれた場所に戻るそうだ。そして、母がしたように、新しいいのちを生み出すのだ。

しかし、生存率は五千分の一。五千個の新しいいのちから、次の代にいのちを継ぐことができるのは、たった一つなのだ。

その夜、ぼくは三頭のウミガメに出会った。彼女たちの産み落とした卵から代を継ぐことができるいのちは生まれるのだろうか。

彼女は〈子どもたち〉の場所をふり返ることもなく、真っ黒な海に消えていった。壮大ないのちの旅を見たような気がした。

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